導入事例

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船橋市立飯山満中学校
生成AIで教育DXを実現!公立中学校の先進的なAI活用事例

時代の変化に対応した新しい学びを提供するため、生成AIを導入された船橋市立飯山満中学校様。
生成AIをどのように活用して教育の質を高め、日常の授業や校務に役立てているか、その具体的な成果をご紹介いただきました。

学校詳細

飯山満中学校は、千葉県船橋市に位置し、東葉高速鉄道飯山満駅から徒歩約10分の高台にあります。この学校は、住宅地に囲まれつつも畑の風景が広がるのどかな環境に立地しており、1983年に創立された学校です。学級数は11クラスで、2年前には Google for Education の事例校にも認定されています。教育目標は、一人一人の個性を生かし、豊かな人間性を持った生徒の育成に努めること。時代の変化に対応した教育の提供を目指し、日々の研究と実践によって教育の質を高める努力を重ねています。全教員が一丸となって新しい学びの形を探求し、学校DX(デジタルトランスフォーメーション)にも積極的に取り組んでいます。

学校名 船橋市立飯山満中学校
住所 千葉県船橋市飯山満町1丁目946-1
TEL 047-422-0088
HP https://www.city.funabashi.lg.jp/
gakkou/0002/hasama-j/index.html

生成AI導入の流れ

2023年10月、文部科学省のリーディングDXスクール事業パイロット校に指定されたことをきっかけに生成AI導入が決定。同年10月下旬に、保護者へ生成AI導入についての説明が行われ、11月にChatGPTが導入された。導入・活用を進めるにあたり、教育業界、特に生成AI分野で活躍されていたスクールエージェント株式会社の田中代表に活用研修を依頼し、ミカサ商事の導入・活用サポートを受けるに至った。

お話をお聞きした先生方

1学年副担任 大塚 洋 先生(左)1学年主任/研究主任 大浜 美樹 先生(中央)3年生副担任、進路指導主事 石原 一水 先生(右)

大浜先生は2021年度、大塚先生と石原先生は2024年度より船橋市立飯山満中学校へ着任された。大浜先生は美術、大塚先生は国語、石原先生は理科を担当されている。

生成AIに対する校内の反応

活用法を模索しながら、積極的に活用する教職員と生徒

インタビュアー:生成AIに対する校内の反応やご感想について、お聞かせいただけますでしょうか?

石原先生:前任校で働いていた際、他の学校へ情報の授業見学に行った時に、一度辻先生(※)の研修を拝見したので、ChatGPTについては知っていましたが、前任校では使ったことはありませんでした。ChatGPTは年齢的な制約があるため、1年生はまだ自分で使うことはできませんが、飯山満中学校では2年生と3年生はChatGPTを使用しています。私は3年生の理科の授業を担当していますが、授業でChatGPTを使って、分からないことを質問している生徒が何人かいました。その様子を見て、「すでに使っているんだな」と感じましたが、頻度はそれほど高くない印象です。生徒がどの程度生成AIを活用し、どのようなことをしているのかについては、はっきりと把握できていない部分もあり、お答えするのが難しいのですが、生徒たちは社会のニュースなどでChatGPTなどの生成AIの存在を知っており、興味を持っているようです。飯山満中学校の上級生(2、3年生)はCanvaを使いこなしている印象です。学習発表のパンフレットを作成したり、委員会のポスターを作成したりしています。一方で、生徒が使ってみたいと考えていて、具体的な使い方について理解できていない、教師も手探りの状態なのはChatGPTかと思います。2024年7月に行った公開授業でも実際に生成AIを使った授業をしてみましたが、具体的な活用法を模索している段階にあると感じました。今日の授業では、PDFデータを読み込ませることができるということを初めて知った生徒が多く、まだ文章を打ち込んで要約させるなど簡単なやり取りを行う程度にとどまっており、それ以上の活用はまだ進んでいないですね。

大塚先生: 私もChatGPTが使えることは前任校で知っていました。若い人たちは気軽に使っていたのですが、正直なところ「自分には関係ないな」と思い、全く手をつけていませんでした。その後、飯山満中学校に赴任することになり、色々と教えてもらったのですが、カタカナ用語が多くて、説明を受けても言葉の意味が分からなかったんです。「それ、どういう意味?」と何度も聞いていました。ただ、うちの学校の先生方は素晴らしいです。忙しい中でも「助けて」と言うと「あぁ、いいですよ」とすぐに教えてくれるんです。つまり、「分からないから使わない」という言い訳がこの学校では通用しないんです。みんな教えてくれるから、逃げられないんですよ(笑)。「何でも聞いて、分かるところは教えるから」と言ってくれるし、もしその先生が分からなくても、他の知っている方がすぐに教えてくれます。だから、逃げられないんです(笑)。飯山満中学校では、生成AIの活用が進んでいます。生成AIの素晴らしさを皆が知っているんです。新しく赴任した私に対しても、その姿勢を熱心に伝えてくれます。聞くところによると、飯山満中学校の先生方は赴任して4年目ぐらいの方が多いのですが、しっかり新しい技術を活用していこうという姿勢を持っています。私も、この学校に来たからには覚悟を決めてやっていますが、分からないこともたくさんあります。特に年を取ると新しいことを覚えるのに時間がかかりますが、何度聞いても快く教えてくれる先生方が集まっていることに、本当に感謝しています。普通なら質問しても「ちょっと待って」と言われることがあると思うのですが、ここでは「ちょっと待って」がないんです。自分の手を止めてでも教えてくれる。すごいなと思います。

インタビュアー:先生方同士のサポートが非常に手厚いんですね。生徒様の反応はいかがでしょうか?

大塚先生:生徒たちは、生成AIに大変興味を持っているようです。1年生の国語の授業では「桜蝶」という教材を使ったのですが、この教材は、一つの出来事を客観的な視点と登場人物の視点という、二つの異なる角度から描いた文章で構成されています。授業では、もう一人の登場人物の視点から描いた文章を作るという課題を出しました。1年生はまだ生成AIを使える年齢ではないので、私がChatGPTに既存の文章を別の登場人物の視点に書き換えるように指示しました。すると、驚くほど自然な文章が生成され、それを生徒たちに見せると「えー!使いたい!」と大変興味を持ち、来年からの使用を楽しみにしている様子でした。ChatGPTに与える指示(プロンプト)をわざと分かりにくくすると、最初は空欄があったり、ひどい文章が出てきました。しかし、その空欄を訂正するように指示すると、すぐに修正した文章が出てきます。何度か試すうちに、次第に適切な文章を生成するようになりました。本来は、生徒たち自身がChatGPTを使って文章を作成することを目指していますが、1年生はまだChatGPTを使用できないため、授業ではChatGPTが生成した不完全な文章を生徒たちと一緒に修正する活動を取り入れました。生徒たちは通常、文章を書くのがあまり好きではないようですが、具体的な指示を入れて創作することに面白さを感じたようで、積極的に参加してくれました。ChatGPTを活用することで、生徒たちが文章作成に対して抱いていたハードルを下げ、創造性を育む良い機会になったと感じています。

インタビュアー:教職員・生徒の皆様は、生成AIの活用に積極的な姿勢をお持ちのようですね。

大塚先生:1年生は特に食いつきが良いように感じます。

石原先生:そうですね。今は特に教職員のほうがその気持ちが強いです。ただ、生徒の中には「わざわざ使わなくてもいいんじゃないか」と思っている子もいるかもしれません。生成AIを使うかどうかは、生徒自身の選択に委ねられています。もちろん、自分から積極的に使って活用している子もいますが、その割合がどのくらいかは、実際に聞いてみないと分からないですね。学校側がどれだけその便利さを伝え、生徒が活用したいと思う機会を提供できるかが鍵だと思います。

インタビュアー:生徒様に生成AIを使わせようと決めた理由は、どのようなものでしょうか?

大浜先生:きっかけは、リーディングDXの導入です。将来を見据えると、生成AI導入を中止する選択肢はありませんでしたね。学校で使わなくても、生徒たちは家庭で生成AIを利用する可能性が高いため、学校で正しい使い方を教えないままでは、家庭での利用に伴うトラブルが発生する恐れがあると懸念しました。また、生徒たちが先生を超える知識を持つ事態も起こり得るため、学校で適切な使い方を教える必要性を感じていました。学習指導要領や文部科学省からもChatGPTに関する話題が出てくるなど、生成AIの活用は教育現場において避けては通れない流れです。そこで、私たち教員が率先して生成AIを活用し、検証を行うことで、他の学校にも同様の取り組みが広がる一助になればという強い思いがありました。その活動の一環として、今回2024年7月に公開授業を行いました。私たちの取り組みを多くの方に見ていただくことが重要だと考えています。ただ、やるからには一定の成果を出す必要があると思っていますし、公開授業でも多くの方に見ていただくことで、他の学校にも生成AI活用が広がるような状況を作り上げることができればと考えています。

インタビュアー:生徒様が生成AIを使用する際の保護者様への説明はどのように行われたのでしょうか?

大浜先生:動画で説明を行いました。動画は教務主任が作成したのですが、校長や教頭、研修をしていただいたスクールエージェントの田中先生から生成AIの使用について説明していただきました。40分くらいの内容でしたね。保護者には「生徒に生成AIを使わせたくない場合はフォームを送ってください」と伝えたのですが、保護者からのフォーム送信はなく、生成AIの活用に反対する人はいませんでした。

インタビュアー:導入に対する管理職の方の反応はいかがでしたか?

大塚先生:特に反対はなかったと思います。

大浜先生:そうですね。管理職の方は、先生方が自発的に研究して進める姿勢に感心していて、「応援するよ」という感じでした。

※スクールエージェント株式会社所属。2024年3月末まで教員として、船橋市立飯山満中学校で勤務されており、飯山満中学校への生成AI導入を主導。

新しい技術を使うことへのハードル

インタビュアー:新しい技術を使うことについて、ハードルが高いと感じることはなかったのでしょうか?

石原先生:そうですね、周りの先生方や職員の方々が助けてくださるおかげで、なんとかやってこれていると感じます。本校では、赴任して3、4年目の方が多く、長く勤めている先生方はそれほど多くないのが現状です。特に、これまでメインで進めてこられた辻先生が退職されたため、今後どのように活動を継続していくかという課題があると感じていますが、新しいことに挑戦できるのは素晴らしいことだと思いますので、残された私たちで力を合わせて、生徒たちに貢献できるよう努めたいと思います。本当に周りの方々には感謝しています。

大塚先生:飯山満中学校に赴任する際、周囲から「大変だね」とよく言われました。以前は「生徒指導が大変」という意味で使われていた言葉ですが、本校に限っては「先進的な取り組みをしているから大変だ」という意味で使われているようで、私も最初は大変だなと覚悟していました。しかし、実際に赴任してみると、先生方のサポートが非常に心強く、これまでの私の経験が否定されることはなく、プラスアルファとして新しい技術を取り入れられると分かりました。例えば、私がこれまで行ってきた「話し合い中心の授業」、「『学びあい』の授業」についても、今までの活動に加えてPCを活用するなど、これまでの経験が否定されるわけではなかったので、やりやすかったです。Qubenaなどの新しいツールも最初は戸惑いを感じましたが、実際に使ってみると、生徒たちの学習に非常に有効であることが分かったので、積極的にこれらのツールを活用したいと考えるようになりました。

大浜先生:大塚先生はCanvaの画像生成も使われていましたよね。結構大変だとは思いますが、先生方も楽しんでいる部分があるように思います。

石原先生:そうですね。新しいことを学ぶのはとても楽しいですし、それが子どもたちにプラスになれば嬉しいと考えています。ICT教育の重要性はニュースなどでも頻繁に取り上げられていて、これからの社会で生きていく上で不可欠なスキルだと思います。例えば、高校に進学するとPCの利用頻度が低下してしまうという声も聞きますが、これにより生徒たちの間でPCスキルに大きな差が生まれてしまうのは望ましくない状況です。世界の状況を見ても、日本がこの流れに乗り遅れないようにしなければという使命感を感じています。

大塚先生:あまり苦労はしていないですよね。石原先生は新しいことを学ぶのが楽しいとおっしゃいましたが、私はこれまで知らなかったことばかりで、毎日が新鮮で感動の連続です。特に、4月、5月は驚きの毎日でした。

生成AI導入で変わった点

授業や思考の整理、授業が見える「校務での活用」

インタビュアー:生成AI導入前と導入後で変わった点について、お聞かせいただけますでしょうか?

大浜先生:授業が整理されて、見えるようになったことですね。以前は、年間計画などをひらめきでなんとなく作っていましたが、ChatGPTに「きちんと整理して」と指示すると、驚くほど整理されます。「授業が見える!」という感じです。自分の考えも整理されるなと感じます。

石原先生:自分が思っていることが「そうそう、そういうこと!」という形で表現される気がします。

大塚先生:プロンプトを入力するだけでも、自分の考えが整理されていく感じがしますね。何をしたいのか、どう進めていきたいのかが明確になるので、やり取りを進めるうちに頭の中が整理されていくんです。

大浜先生:学年便りの作成や授業の組み立てなどにもChatGPTを使っているので、校務が楽になったと感じています。

授業での生成AI活用事例

入試問題の解説作成‥理科での活用例

インタビュアー:授業での活用方法についてお聞かせいただけますでしょうか?

石原先生:2024年7月に行った公開授業では、問題の解説をChatGPTに生成させるという取り組みを行いました。3年生の生徒たちは、受験を控えており、入試の過去問題を解く機会が増えていますが、問題集によっては解答はあっても詳しい解説が少なく、理解が進まないという声がありました。そこで、ChatGPTを上手く活用できないかと考えました。5月あたりからChatGPT-4.0が使用できるようになり、PDFやJPEG、PNGなどの画像データも読み込めると聞き、それを使ってみようと試してみました。生徒には、eライブラリーから過去問を抽出し、まずは自分たちで解いてもらいました。解き終わった後、ChatGPTにPDFを読み込ませて、「あなたは理科の先生です。中学生に分かるように解答解説を作成してください」という指示を与え、問題に対する解説文を生成させました。生成された解説文には高校レベルの内容が含まれていることもあったので、それに対して修正を指示すると、中学校の範囲内で訂正され、正しい解答が出てきました。無償版を使用しているため、回数制限がある中での使用でしたが、かなり正確な解答解説が出てくるという印象を持ちました。ただし、あまりにも多くの量を読み込ませると、うまく処理できないことがあるので、適量を守る必要がありますね。

ChatGPTで入試問題の解説を作成
ChatGPTで入試問題の解説を作成

創作活動での活用‥国語での活用例

大塚先生:私は、ChatGPTを活用して創作活動に取り組む授業を行いました。教科書にある「桜蝶」という文章を使用したのですが、この作品は、客観的な視点と登場人物の主観的な視点という2つの文章で構成されており、この2つの視点が合わさって1つの作品になっています。今回は、別のもう一人の登場人物の視点から新しい作品を作るという授業を行いました。以前から、例えば桃太郎の犬が語る桃太郎の話や、浦島太郎の亀を主人公にした物語、あるいはシンデレラの意地悪な継母を主人公にした物語などを作らせてみたいと考えていたんです。最初のうちは、ChatGPTが生成する文章に不自然な部分が多く、修正が必要でした。そこで、今回は生徒たちと一緒に生成された文章を改善していくという授業を行いました。文章を書くのが苦手な生徒たちも多いのですが、先程もお話ししたように、生徒たちは積極的に取り組んでくれました。今回授業を受けたのは1年生なので、自分でChatGPTを使って文章を生成することはできませんが、2年生になった時に自分でやってみようという授業につなげていけたらいいなと思い、このような授業を組みました。次回も今回の続きのような授業を行う予定です。

インタビュアー:1年生は年齢制限でまだChatGPTを使えないと思いますが、すべて大塚先生が代わりに入力されたのでしょうか?

大塚先生:そうです。ただ、授業内では時間的な制限があるので、1日に3人分とか4人分しかできないんですよね。次回はChatGPTにおかしな部分を修正させる予定で、生徒にドキュメントで文章を打たせて、それをChatGPTに入力するのですが、やはり1日に3人分とか4人分しか対応できないかなという感じです。

ChatGPTを活用した授業(国語)の様子
ChatGPTを活用した授業(国語)の様子

生徒へのアドバイス‥美術での活用例

大浜先生:私は、授業中に生徒へのアドバイスをChatGPTを活用して行うという取り組みを行ったのですが、今回、ChatGPTには「まず最初に褒めること」「生徒へアドバイスを3つ提供する」という指示を与えたところ、生徒一人ひとりに応じたアドバイスを適切にしてくれました。生徒からのアンケートでは、ほとんどの生徒が「ChatGPTのアドバイスがとても役に立った」「役に立った」と答えており、「役に立たなかった」という答えはありませんでした。ですので、一定の効果はあったと感じています。従来は、生徒一人ひとりに個別対応するために、できた生徒から順に並んでもらい、アドバイスをするという形でしたが、ChatGPTを活用することで全員に一斉にアドバイスを提供でき、時間もかからずアドバイスをすることができました。1年生はChatGPTを利用できないので、1年生の授業では、私が生成AIから得た回答を配布する形を取っています。
 生徒たちには「ChatGPTを使いたくなければ無理に使わなくてもいい」と伝えましたが、ほとんどの生徒が積極的にChatGPTを使い、作業も順調に進んでいる様子でした。いつもは、こちらから主題を提示しても、できない生徒や時間がかかって終わらない生徒もいるのですが、今回はほぼ同じペースで進行できたという印象です。また、Canvaを使用できたこともあり、作品のクオリティもある程度高く仕上がっていました。先生が言ったから仕方なくやったというのではなく、自分の考えをもとに制作できたことが良かったと思います。

ChatGPTを活用した授業(美術)の様子
ChatGPTを活用した授業(美術)の様子

誤解答に気が付くことができるか、著作権の確認…実際に活用して感じた課題

インタビュアー:生成AI活用において、課題に感じられている点などはありますか?

石原先生:今回の公開授業で感じた課題の一つは、生徒が生成された解答の誤りに気づけるかどうかです。今回は正解があるので、こちらから解答を入力して修正指示を出すことで対応できましたが、生徒が使う際には、ChatGPTが出す答えをそのまま受け入れず、情報をきちんと選別する能力が必要だと感じます。ChatGPTが間違えないように工夫して入力することも大切だと思いました。
 もう一つの課題は、著作権の問題です。利用規約を一応確認しましたが、その辺りのグレーゾーンがどうなっているのか、心配でしたね。

大塚先生:本当にグレーゾーンが増えますよね。

石原先生:万が一生徒が問題を起こしてしまったらまずいので、その点についてはきちんと調べておかなければならないと感じました。ですから、今回、公開授業で生成AIを使う際にも、画像を使うのはまずいかなと思っていたんです。本当は、生徒が分からない問題が出てきたときに、Chromebook で写真を撮って、ChatGPTに読み込ませて答えを出すということを生徒自身にやってもらいたいと思っていたのですが、今回は解答解説をChatGPTで試してみました。ある程度いい解説が出てきたので、ChatGPTもなかなかやるなと感じましたね。
 授業中にChatGPTを使って分からないところを聞く生徒もすでにいますが、今回のように「ChatGPTを使うよ」と明言して使わせたのは初めてでした。今まであまり使ってこなかったので、今回の経験を通じていろいろと気づくことができました。生徒たちも、ChatGPT-4.0で画像を読み込ませることができると知っていたのは3、4人ほどしかいなかったので、今回の授業を通じて新しいことを知ってもらう良い機会になったと思います。

活用を進める上で重要なこと

生徒の活用に制限をかけすぎない

インタビュアー:活用を進める上で最も重要だと思われる点は何でしょうか?

大浜先生:活用が進まない学校は、活用が楽しいというよりも大変だという意見が多くあがっていると思います。例えば、ウイルスやアダルトサイトへのアクセス、故障時の対応や保護者対応といった責任問題を懸念して、「ChatGPTなんて使ってどうするんだ」というマイナスな意見が根強く、導入が進まないという現状があります。他の新しいものを導入する際も同じことがありましたが、トラブルを未然に防ごうという管理側の視点を重視する傾向が強いです。例えば、端末を導入した際にも、故障を懸念して家への持ち帰りを禁止したり、端末の利用を厳しく制限することで、結局生徒たちは使わなくなってしまいました。しかし、このようなやり方では、生徒たちは制限された環境の中でしか成長できず、主体性が育たないと思います。管理する側にとっては制限する方が楽かもしれませんが、それはあくまで管理側の視点にすぎません。そうではなく、生徒たちの主体性を育むためには、間違えたときに「なぜ間違えたのか」を教えてあげることが大切だと思います。例えば、生徒が授業中にゲームをすることがあっても、本校では没収せずに注意をするという方針を取っています。その結果、3年生になると授業中にゲームをする生徒はほとんどいなくなります。社会に出ると、何が正しいことなのかを自分で判断して生きていく必要があります。だからこそ、義務教育の段階から、生徒が自由に利用できる環境を整え、主体性や責任感を育てていくことが重要だと考えています。

大塚先生:大浜先生が言う通り、生徒に対して制限をかけすぎないことだと私も思います。これまでの学校では、管理が厳しく、生徒たちもICTツールを「使っても良いのかな?」という不安を感じていましたが、今は「使って当たり前」という環境になっています。制限をかけすぎると、生徒たちは使わなくなってしまいます。本校では、「道具は使うために存在するもの」という意識が、教職員にも生徒にも根付いていると感じますね。自由に使えることが大切だと私は思います。

インタビュアー:御校ではあまり厳しくルールを定めずに運用されているのですね。

大浜先生:そうですね。でも、ダメなものはダメと、もちろん言います。授業中にゲームをしている場合などは注意しますが、それでも生徒たちは比較的ちゃんと使っていますね。

石原先生:そうですね。ほとんどの生徒はもう授業中にゲームをすることはありません。時々チラッと見ている子もいますが、それも少しだけです。皆それぞれ自分の端末を持っているので、家庭で色々と試している子も多いと思います。最近はゲーミングPCを持っている子も増えていて、そういった端末で様々なことをしているんじゃないですかね。だから、学校でわざわざ熱中してしまう子はいないのではないかと思います。家ではもっとやっている子もいるかもしれませんが。

大浜先生:そうやって識別して利用する能力も、今の時代には絶対に必要です。今は、何でも管理されて「右向け右」という時代ではありませんからね。

石原先生:その能力の土台を作るのは簡単ではないので、どれくらいの時間がかかるのだろうという不安は感じます。

大浜先生:私たちも生成AIを活用する際に、「ごめんごめん、もう一回入力して!」とやり直すこともあります。「あれ?戻らない!」ということも(笑)。それを繰り返していくうちに、生徒も「いじるのはやめよう」と学んでいくんです。最初は皆がシートをいじったりして、消えてしまうこともありますが、徐々にそのようなことは減っていきます。トライアンドエラーを繰り返す場があるかどうかが大切なんです。それが学校にあるかどうかですね。生成AIでも何でもそうですが、実際にトラブルを体験しないと分からないことがあります。経験を重ねて、失敗や成功を積み重ねることで、試行錯誤していかないといけないと思います。

インタビュアー:先生方もトライアンドエラーを重ねて進めていらっしゃるのですね。

大浜先生:そうですね、エラーばかりですけどね(笑)

保護者の理解

石原先生:あとは、義務教育の場である以上、保護者の理解は不可欠です。新しい取り組みを行う際に、保護者から多くの問い合わせや苦情が寄せられると、その取り組みを継続することが難しくなります。しかし、本校では、生徒が家庭でもICTを活用し、新しい取り組みをしている姿を保護者の方々が見て、それが子供たちにとってプラスになっていると感じていただけているため、様々な取り組みが可能になっている部分があると思います。やはり、生徒本人だけでなく保護者の存在がありますので、保護者の方々が理解を示してくださっているかどうかは、学校という場では非常に重要なことです。ただ、保護者の中には、ICTを使用することで本当に力がついているのか、受験勉強に影響しないかと心配される方もいらっしゃいます。そのような質問を受けた際に、正確に説明できるようにするためにも、その評価や分析方法を今後しっかりと確立していく必要があると感じています。現時点ではまだその段階に至っておらず、これから具体的に進めていく必要がありますね。

サポート環境を整え、使わざるを得ない状況に

インタビュアー:一部の先生だけが活用していて、他の先生方はまだ使っていないという状況の学校様も多いかと思います。そういった学校様に向けて、「こうすれば全ての先生方が活用していただけるようになるのでは」といった工夫などはありますでしょうか?

大塚先生:やはり使わざるを得ない状況にすることですね(笑)。

インタビュアー:先程おっしゃっていた、サポート体制の整備などでしょうか?

大塚先生:そうですね。この学校の人的なサポート環境は本当に素晴らしいです。皆、本当に親切です。

石原先生:身近に相談できる人がいるというのは重要ですね。何か分からないことがあったときに、すぐに聞ける人がいるというのは大きいです。使ってみると便利ですからね。ある程度その便利さに気づけると、「こんなこともできる」「あんなこともできる」と広がっていくんです。

大浜先生:少しずつでも使い始めると良いんです。最初は簡単なことからでも。

石原先生:教員が自由に使える環境が整うことが大切ですね。

大浜先生:そうですね。まずは教員が使い始めることで、生徒に使い方を教えることができるようになりますし、その効果がよくわかります。ですので、まずは校務での活用を試してみるのがいいと思います。私たちも最初に試した際に、校務が大幅に楽になることに気づきました。例えば、文章を書くのが苦手なら、ChatGPTに任せてから自分で手を加えると、仕事がずっとスムーズに進むと感じました。

大塚先生:この間、ちょっとした文章を作成するのにChatGPTを使っている先生がいて、すごいなと思いました。

石原先生:ChatGPTがアイデアを出してくれるので、そういうちょっとした部分からでも使い始めると良いですよね。

正しい使い方を教えるための教員の理解

大塚先生:さっき大浜先生も言っていましたが、生徒たちは「ダメだよ」と言っても使ってしまいます。だから、変な使い方をしないように、学校で正しい使い方を教えることが大切だと教員に伝えると説得力があるかもしれませんね。生徒たちは興味があるので、私たち教員よりもどんどん使い始めてしまいます。

石原先生:そうですね、もし生徒たちに質問されても、教員が知らなければ答えられませんから。

大浜先生:生徒が提出物をChatGPTで作り、教員がそれに気づかず後から分かったというケースもよく聞きますが、それも教員側が生成AIについて知らないから、生徒に足元を見られているということなんですよね。そうではなく、教員が生成AIを理解したうえで、正しい使い方を学んでいこうという風に生徒を導けると良いですよね。

大塚先生:多分生徒たちも「これ、バレるぞ」っていうのが分かってくるんじゃないでしょうか。1年生はまだそこまではやらないと思いますが、例えば読書感想文だってChatGPTを使えばできちゃいます。でも、教員が生成AIを理解していれば、生徒は「先生たちは分かってるぞ」と考えるようになると思います。

大浜先生:そうですね。教員も「これ、中学生が使う言葉じゃないよね」というように分かるので。

大塚先生:本当に、教員が生成AIについて知らない学校だと、生徒たちの方が先に進んでしまって、先生たちが分からないということもあるかもしれませんね。

今後の活用目標とアドバイス

まずは教員から使い始めること

インタビュアー:最後に、今後の生成AIの活用方法についての展望や、まだ導入されていない学校様へのアドバイスがありましたら、ご意見をお聞かせください。

大塚先生:創作活動にぜひ活用してみたいです。まだ導入されていない学校に対しては、私からは特に言えることはないですが、さっきも話した通り、まずは教員が使い始めることが大事だと思います。それができれば、生徒たちは自然と興味を持って飛びついてくると思います。生徒たちは新しいものが好きですからね。

石原先生:今は話題にもなっていますし、時代の流れもありますから。

大塚先生:まずは教員が先に使い始めることが重要だと思います。

便利さを感じる機会の提供、チームで活用すること

石原先生:自分から始めるのはハードルが高いと感じる人も多いので、研修で活用方法を紹介して、まずは「便利だな」と思ってもらう機会を提供することが必要だと思います。能動的に使用し始めるのは難しいですから。ある程度、強制的にでも提供される場があると、教員が理解を深め、動き出すきっかけになるのではないでしょうか。本校が受けた田中先生の研修のようなきっかけがあると動きやすくなると思います。特に役職のある先生方には効果的だと思います。

田中先生による生成AI活用研修の様子
田中先生による生成AI活用研修の様子

大浜先生:やはり、複数の人で取り組むのが良いですね。今回の公開授業では、サイト作成をグループで行ったのですが、これが非常に良い取り組みだったと思います。一人ひとりが単独で作成するのではなく、誰かが作ったものを参考にしながら進める、つまりグループで意見交換しながら進めるほうが良いと感じました。また、共通のテーマをグループで作ることで、皆が自分のアイデアを出し合うことができ、1人で孤独に作業するよりも、仲間と協力することで教師自身の学びも深まると思います。

大塚先生:そうですね。チームで動いているのが大事だと思います。それがすごく効果的だと感じます。

大浜先生:全体で進めることが大切ですし、あとはみんな楽しんで進めることですね。色々なことができるので、楽しみながら進めることが重要です。もし苦行だと感じてしまうと、続かなくなってしまいますからね。今もまだ考えながら模索している段階です。

教育現場でのAI活用を推進するため、全教員と生徒が一体となって取り組まれている船橋市立飯山満中学校様。具体的な活用事例とともに、活用を推進するにあたって重要な考え方、取り組み方などについてお話しいただきました。このたびは貴重なご意見や情報を共有していただき、誠にありがとうございました。

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