学習者用端末を iPad から Chromebook へ切り替えた理由
実習でキーボードを使用するための端末切り替え
インタビュアー:御校は学習者用端末を iPad から Chromebook へ切り替えられたと伺っております。iPad から Chromebook に切り替えられた理由についてお聞かせいただけますでしょうか?
川口先生:2018年、初めての学習者用端末に iPad を導入した理由は、当時 Chromebook が日本語に未対応であり、キーボードに慣れていない生徒が多かったからです。また、iPad は様々なアプリが利用でき、特に教育用のアプリは Chromebook よりも充実していたため、iPad を選びました。現在では Google Workspace for Education(以下、Google Workspace と表記)も使いやすいツールとなりましたが、当時は機能が今ほど充実していないという印象だったため、iPad を導入することになりました。ですが、本校は商業科があるためワープロ検定や表計算検定のための実習を行うのですが、実習でキーボードが必要になることから、安価かつタッチパネルが使える端末である Chromebook に切り替えることが選択肢に挙がりました。iPad にキーボードを付けることも考えたのですが、iPad はキーボードを別途購入しなければいけないので、その分費用がかかりますし、Windows のキーボードと操作性が違うので、生徒が混乱するのではないかと思ったんです。Chromebook の日本語キーボードは、今では Windows とほとんど違いがない状態なので、操作がしやすいと思い、Chromebook を導入することになりました。
インタビュアー:Chromebook を導入される前の実習は iPad でされていたのでしょうか。
川口先生:iPad では実習ができないので、実習の度にコンピュータ用の実習室に移動して、コンピュータ室で実習を行っていました。そのため、家にキーボード付きの端末がある生徒とそうでない生徒で、習熟度に差が出てきていたことも、キーボード付きの端末を導入させたいと考えた理由の1つですね。
端末切替時に参考にした情報
インタビュアー:Chromebook に切り替える際は、どのような情報を参考にされたのでしょうか。
川口先生:ICTの研修会やWebで公開されている情報を参考にしていました。ミカサさんの G-Apps.jp も拝見させていただきました。
インタビュアー:弊社サイトをご覧いただいたのですね。ありがとうございます。
川口先生:研修会やWebなどで得られた情報から、Chromebook が主流になってきたなと感じました。福岡市内では小学校、中学校ともに Chromebook が導入されているので、生徒は Chromebook のほうが馴染みがあり、違和感なく利用できるのではと思い端末を切り替えることになりました。
Chromebook の導入で充実した学習環境を実現
インタビュアー:Chromebook を導入された現在は、Chromebook で実習を行われているのでしょうか。
川口先生:一部を Chromebook で行っています。検定そのものが Windows を利用することを中心に組まれているので、教室で Chromebook を利用して行う部分と Windows 端末があるコンピュータ室を利用する部分のどちらもあります。ただ、Chromebook を導入したおかげでタイピングや操作の練習が家でできるようになったので、学習環境が非常に充実してきたのではないかなと思います。


Chromebook 導入前に抱えられていた課題および不安
端末管理を校内で行うことへの不安
インタビュアー:Chromebook 導入前に抱えられていた課題および不安についてお聞かせいただけますでしょうか。
川口先生:これまで iPad の管理は導入時のキッティング作業や、アプリの導入・削除、学校を離れる生徒や卒業する生徒の学校管理を外す作業など全て業者に依頼し、管理をしていただいておりました。今まで、管理コンソールを校内の担当者が操作することはなかったので、禁止事項の設定や不具合時の対応などの端末設定を我々でできるのかどうかが一番心配でした。校内の教職員だけで管理できるのかという不安はありましたが、ミカサさんの色々なアドバイスのおかげで、管理コンソールの使い方がわかってきましたし、Chromebook が非常に高性能で、操作しやすいので、導入前の不安は杞憂だったなと感じています。
端末切替時の体制
インタビュアー:iPad から Chromebook に切り替えた際の、体制変更はどのように行われたのでしょうか。
川口先生:iPad の管理は業者の方がしてくれているので、iPad は従来通り業者の方におまかせして、私は Chromebook だけを管理しています。ですので、現状は業者の方に委託している部分と校内で管理している部分があります。
Chromebook に対する印象および校内での反応
トラブルが起きるのではないかと不安を感じていた導入前
インタビュアー:Chromebook に対する印象および校内での反応をお聞かせいただけますでしょうか。
川口先生:今回、キーボードの取り外しが可能なデタッチャブルタイプの機種を導入しました。そのおかげで、机の上をキーボードが占有することがないので、iPad を使用する時と同じように机の上を広く使うことができています。アプリについては、iPad の時からロイロノートを継続して利用しているので、先生方も違和感なく授業を行っているようで大きなトラブルはないですね。先生方から、「これができないから困る」とか、「あれをこうしてほしい」という悩みや要望が出てくるのではと不安だったのですが、いざ導入してみるとそういった要望は無かったので、拍子抜けしています。
インタビュアー:悩みや要望がでてくるのではと不安だったとのことですが、Chromebook 導入前は不安を感じられた先生が多かったのでしょうか。
川口先生:そうですね。生徒は Chromebook を導入したのですが、職員はまだ iPad を使用しているので、職員と生徒の端末が違うことで何か不具合や不都合が起こるのではないかと心配していました。万が一、iPad ではできて、Chromebook ではできない部分があり、授業展開に差ができるのであれば、何らかの策を講じなければいけないと思っていたのですが、約半年使って、「こうしてほしい」、「これができなくて困る」といった要望が一切出てこないんですよね。スムーズに移行できたと感じています。あえて言うなら、ないものねだりで2、3年生は Chromebook がいい、1年生は iPad がいいと言っているぐらいですね。
インタビュアー:どちらの端末にも良い点がありますからね。
川口先生:そうですね。そういった学年ごとの意見はありますけど、1年生に授業の面で聞いてみましたが、もう慣れたとのことで特に問題はないようです。
先生同士で行われる情報共有
インタビュアー:事前アンケートで「ICTに苦手意識を持つ先生が、新しい操作を覚えることに不安を感じていた」と伺っております。詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
川口先生:ICTに苦手意識を持つ先生は、新しいものを覚えなきゃいけないという強い不安を持たれていました。やはり先生方もICTに詳しい方とそうでない方がいらっしゃいますので、新しいことを覚えるのが苦手な方は導入時にはかなり反対されていました。ですが、実際に導入してみると「なんだ今までと同じじゃないか」という反応で、不満の声が一切聞こえなかったので、良かったなと思っています。
インタビュアー:新しいことに抵抗のある先生方に活用していただくために、研修などは行なわれたのでしょうか。
川口先生:特に行っていないですね。先生方同士、情報交換を各自で行ってもらって活用を進めています。若い先生方から出てくるアイデアや使ってみて発見した活用方法などを共有してもらっています。私も先生方から色々情報を聞きながら、自分の授業に取り入れています。
インタビュアー:研修を行う必要がないぐらい自然に活用が進んでいるという状況なのですね。
川口先生:そうですね。所謂Z世代の先生方はICTの活用に慣れているので、ベテランの先生方よりも新しい発想で使い方を探求されたり、先生同士、色々なアイデアを交換していただいたりしています。私があえて刺激を与えるというよりは、見守るぐらいがちょうどいいのかなと思っていますね。
インタビュアー:ICTの活用が得意な方がご自身で活用方法を見つけられて、先生方に進んで情報共有されているのですね。
川口先生:そうですね。公の場で活用方法を紹介することはしていないのですが、普段の会話の中で共有して、小さなところから活用が広がって、いつの間にか授業の中で新しいアイデアが生かされてるという感じですね。
Chromebook 導入に対する保護者の反応
インタビュアー:Chromebook 導入に対して、保護者様の反応はいかがでしたか。
川口先生:福岡市内の Chromebook 導入が貸与だったので、ご家庭で自分用の Chromebook をすでに購入されていた方が数名いらっしゃって、新たに購入しなければいけないのかという問い合わせがありました。ですが、違う機種を持っている生徒がいることで、生徒間でトラブルが起こることは避けたいので、同じ学習環境を実現するためということを納得していただき、同じ機種を購入していただくことになりました。
ミカサ商事の提案を採用いただいた経緯と理由
端末管理を委託することへの疑問
インタビュアー:弊社の提案を採用いただいた経緯と理由についてお聞かせいただけますでしょうか。
川口先生:iPad 導入時にお願いしていた大手キャリア3社と別のもう1社に見積をいただき、計4社の見積を比較し検討していました。いずれも管理ツールを全て業者に委託する提案だったのですが、このまま端末管理を業者に委託していいのかなという違和感がありました。我々が管理方法を把握し、端末導入時から生徒の Chromebook を管理していたほうがいいのではないかという考えがあったんです。そのように考えていたところに、ミカサさんが学校の考えに合った「学校で端末を管理する」という内容の提案をしてくれました。管理を自分たちで行えば、導入費用が抑えられ保護者に納得していただきやすいということから、ミカサさんから導入することになりました。
インタビュアー:学校が管理を担うということは、先生方皆様が重視されていたポイントなのでしょうか。
川口先生:当校の担当者として考えていたことですね。管理を委託している業者さんは、本校以外の学校も担当しているので、どうしても対応が遅くなったりトラブルが起こった時の対処が上手くいかなかったりしたことがあったんです。結果的には対応していただけるのですが、やはり対応のスピーディーさを考えると、管理は我々が行うべきじゃないかなと思いました。
サポート面での満足度
インタビュアー:弊社のサポートに関して、どのように感じていただけていますでしょうか。
川口先生:操作に関するサポートをしていただいておりますが、メールで問い合わせて1営業日中には回答をいただけるので非常に助かっています。明確な指示で、こちらとしても操作がわかりやすいので、大変助かります。
iPad と Chromebook の運用における違い
端末故障時の対応
インタビュアー:iPad と Chromebook の運用における違いについてお聞かせいただけますでしょうか。
川口先生:iPad のようにタッチパネルで手書き入力ができ、キーボードでの入力もできるという2通りの使い方ができる Chromebook は非常に扱いやすいと感じました。大きく違うと感じているのは、故障時の対応ですね。学校の意向で、保証があると安易に端末を壊すのではないかという懸念点から、導入当初は iPad に保証をつけなかったんです。ですが、端末修理は本体代金に近い金額を請求されるので、やはり保証は必要だということで今年から保証をつけるようにしました。比較的故障が少ないことは幸いでしたが、iPad の場合は修理の手続きが少し難しいと感じています。端末を入れる箱や梱包材などを全て用意して、こちらから修理センターに送らなければいけないので、そういった手間が大変だなと思っています。ミカサさんの修理対応は、業者の方が梱包用の箱を一緒に持ってきていただけるので、端末を渡すだけで済むというのは非常に助かっています。教職員の負担はかなり減ったと感じます。
ICTに関する展望
Google Workspace を活用した高度な授業展開
インタビュアー:ICTに関する今後の活用計画について、お聞かせいただけますでしょうか。
川口先生:端末切替の体制変更で授業を止めることになってはいけないので、これまで使ってきたロイロノートを中心に今は授業を展開していますが、今後は Google Workspace を活用してより高度な授業に取り組んでいきたいと思います。また、AI技術の発展が進んでいるので、今後AIを導入していくのか、生徒にどの程度AIを使用させるのかなども考えていかないといけないですね。
インタビュアー:川口様としては、生成AI等を積極的に導入していこうというお考えなのでしょうか。
川口先生:そうですね。生成AIをいかに活用するかという時代になってきていますし、なんでも人が考えてやらなければならないというものではないと感じています。ただ、生成AIが出してくる結果や提案をうけて、次の選択を我々がどう判断していくのかが大事だと思います。ですので、生徒達がそのような時代を生きるためには、自分で考えることも必要ですが、生成AIを活用したアイデア出しなど、生成AIの活用方法を自分なりに模索できるような生徒を育てていかなければいけないと思っています。
情報社会に貢献できる人材育成
インタビュアー:事前アンケートで「次世代の情報社会に貢献できる人材を育成していくため、ICTを活用した授業展開を日々研鑽していきたい」と伺っております。詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
川口先生:若い世代は、活用についてわざわざ教えたり、指示を出さなくても自然に活用することができます。活用については、若い世代になればなるほど柔軟で、冒険心を持って、前向きにどんどん情報機器を活用してくれます。自分なりに活用方法を見つけてくれるような、そのような能力のある子たちなので、ICTの活用に制限をかけるよりも、もっと視野を広げて、その中で良いものと悪いものを自分なりに選別していけるようにすることがこれからの時代に必要なのかなと思います。生成AIについても、読書感想文を生成AIで作成して、課題として提出したことが問題になりましたよね。それを踏まえて、我々教員も生成AIの活用において問われるべき教育目標などを定めなければいけません。そのうえで、生成AIをただ単純に答えを出すだけのものとして使うのではなく、幅広い知見を得るための手段として使っていかなければいけないのかなと思っています。まずは教職員から活用を始めて、積極的に活用方法等を広めながら、最終的には生徒が活用できるようになればいいなと思います。
変化に対応するために必要なスキルの育成
インタビュアー:事前アンケートで「ブラウザベースの教育系情報ツールが充実し、選択肢が一気に増えた」ということも伺っております。詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
川口先生:そうですね。今は、例えば Canva のような画像作成や動画作成もできるツールや、生成AIなどを活用してプレゼンテーションを行えるツールなどがあります。テキストベースのものだけではなく、画像、音声、音楽なども、どんどんAIを活用する時代になりつつありますよね。2022年11月に ChatGPT が公開されて、それから1年で ChatGPT を超えるようなツールが出ている昨今ですので、新しく出てきたツールにどんどん適応していかなければいけないです。新しいツールに対応していくためには、クラウドベースで動く環境はとても適していると思います。ツールを利用するためにアプリをダウンロードする必要があると、端末そのものの容量が制限されてしまいますし、新しいツールが出た場合、生徒の端末にアプリをダウンロードする作業が都度必要になりますので、ツールを利用するまでに時間がかかってしまいます。それは、スピード感のある時代に適していないのではないかと思います。ブラウザベースのツールであれば、変化に柔軟に対応できるのではないかと思っています。新しいツールがでれば、手当たり次第に使ってみて、その中から使いやすいものや目的に即したツールを自分なりに選別していける人材を育てていきたいですね。

他の学校様へのアドバイス
インタビュアー:他の学校様へのメッセージはございますか。
川口先生:他の学校さんに伝えたいのは、ICT活用については、学校側で構えて先生方があれしなきゃいけないこれしなきゃいけないと考えるよりも、まずは使ってみることが一番ということですね。必要な環境をある程度整えておけば、生徒から教員へ様々な提案をしてくれますし、そういったところから生徒と教員のコミュニケーションが生まれます。特にベテランの先生方がICT活用に抵抗がある場合が多いと思うのですが、思い切って使ってみたらなんてことなかったというケースが多いので、様々なツールをどんどん導入してもらいたいと思っています。
学習環境を整えるため、Chromebook への切り替えを行われた博多女子高等学校様。端末を切り替えた結果や、Chromebook や Google Workspace を活用した今後の展開などについてお話しいただきました。このたびは貴重なご意見や情報を共有していただき、誠にありがとうございました。
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ミカサ商事株式会社