1 人 1 台の生徒用端末に Chromebook を選んだ理由と評価
県から配備されたChromebook をコロナ対応に活用・・・学習への発展
インタビュアー:2019年には、県から配備された 44台の Chromebook と、教職員向けの Google Workspace アカウントを既に保有されていました。今回、生徒用端末として Chromebook を採用された背景はどのようなものだったのでしょうか?
篠田教頭:実は、コロナ第一波が来るまで、県から配備された44台の Chromebook はほとんど使われていない状況でした。私は、コロナ流行以前に総合教育センターの指導主事をしており、その頃に Chromebook の研修なども受けていたこともあり、ある程度使い方がわかっていたんですね。ですので、2020年4月に本校に赴任してすぐに、Google Workspace を使う環境を一気に立ち上げていきました。例えば、紙で行っていた健康観察を Google フォーム(※1)に代えるとか、全校集会を Google Meet™(※2)で放送するとかですね。人との接触を減らす試みとして、電子化していくために Google Workspace や Chromebook を使うことに対する反対意見はほぼなかったですね。
最初は、私や、PCに苦手意識のないプロジェクトチームのメンバーが中心になってやっていました。しかし、徐々に周囲に教えたり、移譲していったりして、色んな人が Chromebook を使う機会が必然的に増えていきました。このような背景があったので、「同じものを生徒にも使ってもらいましょう」という話になった時は、反対は少なかったです。
※1 Google フォームとは、Google Workspace に含まれる基本無料のアンケート作成ツール
※2 Google Meet とは、Google Workspace に含まれる基本無料のビデオ会議ツール
インタビュアー:元々保有していた Chromebook が、コロナ流行によるオンライン化などの対応に活用でき、それが1つのきっかけになって生徒の学習にも広がっていくという流れがあったんですね。
篠田教頭:宝の持ち腐れになりそうだったところを、うまく使い始められたかなと思いますね。私は行政から現場に移った立場ですが、そういう意味ではいいタイミングで赴任できたのかなと思っています。生徒用端末として Chromebook を1人1台整備しようという話が最初に出たのは、2020年の7月頃だったと思います。
他のOSとの比較検討。iPad の選択肢も
篠田教頭:生徒用端末としては、「iPad を検討しませんか」という意見もありましたね。ただ、少なくとも当時は Chromebook のほうが安価であるという情報を入手していましたし、キーボードが常時接続されているのと iPad に外付けするのとでは前者のほうがいいだろうということもあり、Chromebook 採用となりました。
インタビュアー:家庭に ネットワーク環境がない場合のことを考えると、オンラインでの利用が主となる Chromebook は避けるべきかという議論も時々ありますが、そういったご意見はございましたか?
篠田教頭:それはなかったですね。県の取組によって学習用校内ネットワークが整備されており、本校では「家でできなければ学校に来て学校の回線に繋ぐ」という運用方針が決まっていました。これは県からも認められているので、Chromebook を整備する話以前に決めたことですね。
ちなみに、 2020年に行った家庭のネットワーク環境についての調査では、 600人弱の全生徒のうち、家に Wi-Fi がないという回答は25件でした。未回答の生徒もいましたので、多く見積もっても全体の20分の1ほどでしょうか。
「導入担当として」「先生として」 Chromebook の評価は?
インタビュアー:Chromebook を導入された今、あらためて Chromebook について感じられている良さ、あるいは課題などをお聞きしてもよろしいでしょうか。
篠田教頭:良さは起動の速さや、クラウドベースの端末であるところですね。また、Google Workspace と合わせて使うことで共同編集ができるので、ファイルなどをシェアしやすいです。Google ドキュメント™ や Google スライド™ などは、かなり Microsoft Office との互換性も高まっているとは思いますが、例えば縦書きなど、Office でできるがドキュメントではできないことがなくなればより便利だなと思います。
君島先生:校務でパソコンを使って Office は使うので、できれば Excel とか Wordが Chromebook でも同じように使えるといいですよね。あとは、今本校で入れているタイプ(※3)は、耐久性がありそうなんですけど少し重たいと感じる生徒もいるようなので、持ち帰り時のことを考えると丈夫かつ軽いものがあればと思いますね。
君島先生:Chromebook ってペン付で販売されているものがありますよね? 個人的には、単語テストを作ってみて思ったんですけど(※4)、ペンがあれば Chromebook で筆記ができるんですよね。そうなると Chromebook を買った後にペンを注文する、もしくは自分の家にあれば使うというのは差異が出てしまうので、費用との兼ね合いにはなりますけど、ペン付の機種はいいと思いました。例えば、プリントを Google Classroom (※5)で配布して、それに直接ペンで書き込みできたら紙で配らなくてもいいし楽ですよね。すぐ消したり、マーカーを引いたりも画面上でできるので。
※3 2021年度採用機種は「 HP Chromebook x360 11 G3 EE (1.4kg)」。
※4 三村先生は英語の教科担任をされている
※5 Google Classroom とは、課題などのやりとりをオンラインで行うことができる学習管理プラットフォーム
導入してよかった? 導入してから半年経った校内の様子
教員向けアンケート結果は9割以上が「導入して良かった」
- ①( 4 )大変良かった
- 19.0%
- ②( 15 )良かった
- 71.4%
- ③( 2 )どちらとも言えない
- 9.5%
- ④( 0 )あまり良くない
- 0%
- ⑤( 0 )全く良くない
- 0%
インタビュアー:新入生への初めての1人1台の導入から半年ほど経たれますが、学校内のご様子はいかがでしょうか?
篠田教頭:最近集計した、教員向けアンケートの結果があります。任意なので全教員の半数ほどの21名が回答しています。Chromebook 導入はどうでしたかという質問に対して、「大変良かった」が19%、「良かった」が71.4% なので合わせて91.4%、「どちらとも言えない」が2名で9.5%、「あまり良くない」や「全く良くない」の回答はありませんでした。
君島先生:国語の先生の回答で、「Chromebook を導入したことによって授業の展開が変わってきて、かなりよかった」という感想ももらっているので、確かに、使い方次第で、今までのパターンからより多くの情報を生徒に伝えられたりするという点で効果はあるのかなと感じましたね。
インタビュアー:Chromebook を1人1台持ってからの生徒様のご様子は、先生方の目にはどのように映られていますか?
三村先生:やっぱり最初はタイピングとかノートパソコンというものには詳しくなかったんですけど、彼ら(生徒たち)は IT社会に生きている子たちなので、面白くなってくるんでしょうね。タイピングも早くなったし、Google スライドを使ってプレゼンなどをしている授業もあるので、生きる力っていうんですかね。パソコンを使ってそういうことができるようになっています。スマートフォンやタブレットではなく、ノートパソコンというものが、彼らにとってより身近に、「通常」になってきているのかなという印象があります。
インタビュアー:ノートパソコンに触れる機会が多くなって、社会に出る上で必要になる ITリテラシーの向上にも繋がっているということですね。
導入前に巻き起こった不安や懸念点
インタビュアー:先生方は、Chromebook を1人1台配ろうという話になった際に、どのようなご所感をお持ちになられましたか?
木村先生:最初は保護者の負担がかなり増えてしまうのではないかという反対意見がありました。あとは保管の面で「どこに置くのか」、「充電をどうするか」、「スマホは登校から下校まで使用禁止なのにChromebook はいいのか」そういった議論がありました。
インタビュアー:保護者への案内や購入方法の工夫については、後ほど篠田教頭にもお伺いできればと思います。保管に関しては実際にはどうされているのですか?
木村先生:ルールとしては、持ち帰って家で充電をして持ってくる、が基本ですね。管理などについては、導入時にルールを作って、一番最初に生徒が開封してセッティングする時に説明していました。
インタビュアー:結果としてトラブルや管理上の予想外の問題が起きたことは・・・
木村先生・三村先生・君島先生:今のところないですね。
導入前の懸念点に対して、実際の結果は?
インタビュアー:初めての1人1台導入ということで、様々な懸念点が上がっていたとのことでした。実際に導入されて、どういう結果になったと思われますか?
木村先生:一部経済的に厳しい家庭は購入できないということで、貸出という形をとっていますが、それ以外の家庭では、むしろ安価に良いものが購入できたという声もあったようです。実際に、生徒で端末はスマートフォン以外持っていなかったという子も、自分のパソコン的なものを買えたと喜んでいたりだとか。導入に関しては結果的にはよかったのかなと思いますね。
担当強化 | アンケートに記載された意見(抜粋) |
---|---|
国語 | 自分にとっては授業形態の改善につながった感じがするので、導入は大変有効だと思う。オンライン授業は普段の授業に近い質が保てた気がする。 |
英語 | グループプレゼンでは、Google スライドを各自が作り、グループで統合し、ニュース番組を作成した。スライドの使い方に慣れてくるとスマホでも編集できる場合もあったが、やはり一人一台持ちの方が圧倒的に助かる。 おがわ学だけに限らず、他であっても総探の特性上、発表の機会が基本的にはあると思うので、Chromebook が活躍する場面は増えていくのではないか。 |
社会 | 夏季休業中に、「行ってみたい国」について調べ、スライド作成を課題とした。2学期の分散登校期間に、Classroom の Google Meet でスライドを共有して、発表。自宅・教室受講者で、進度に差がなく授業することができた。 |
国語 | ポートフォリオにより講話や行事の振り返りが提出しっぱなしにならず、本人の手元に残るのがとても良い。 |
インタビュアー:木村先生ご自身は、導入してよかったと感じられるところについてお伺いしてもよろしいでしょうか?
木村先生:私自身は情報の教員で、 もともと Windows のパソコンを使って授業を行う立場ですので、授業では Chromebook を使っていないのですが、一番のメリットは、生徒がすぐに調べものができることとか。あるいは、今まで紙でとっていたアンケートや講演会の記録を、代わりに Chromebook と Classi のポートフォリオを利用して入力させていく、という形がとれることですかね。教員の自分はそれを記録として蓄積できて、生徒本人も見られる。紙だと提出した後に先生が返さなかったりすることもあるんですけど、ポートフォリオでは本人も保管できて、見つめ直しなどもできるので。
初めての1人1台導入までの道のり
県内の先行導入校への視察、共同での調達へ
インタビュアー:導入検討の進め方や経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか?
篠田教頭:1人1台の導入に関しては時間をかけながら進めました。一番最初に話を出したのは2020年7月ごろに、「来年度に向けて検討します」という形でしたね。コロナ対応関連で組織した ICT による学習支援のためのプロジェクトチームがあったので、そのメンバーと、各教科等の1人1台のポジティブな事例等を集めて、校内に小出しに紹介していきました。
そんな中、同じく県内の公立高校さんが、既に1人1台を2020年度中に進めているという話を聞いて、11月頃に視察に行きました。その高校さんがちょうど導入して間もないタイミングだったんですね。値段とかも見させてもらって、本校が価格調査で入手していた家電量販店の法人向けの見積よりも安かったこともあり、(その高校さんと)共同で進めましょうかという話になって、ミカサ商事さんを紹介してもらいました。現実味が出たのはその辺りからですね。
インタビュアー:先行導入されていた学校様と、ちょうどのタイミングで情報交換することができたのですね。
篠田教頭:そこは大きかったですね。校内の納得感にも影響したと思います。単独で先んじて導入するとなると、反対意見が多く出てくると思うのですが。そうではなく、(視察した学校に加えてもう1つの他校と)3校で共同調達を計画していますという話を校内にしていたので、実現の可能性が高まりました。やはり、他がやってるんだというのを知ると安心するところがあると思います。
授業時間以外の利用もOK・・・「生徒のアクティブな学び」への思い
インタビュアー:小川高校様では、授業だけでなく、休み時間や校外での利用を許可されていますね。どのような議論の結果、このような運用とされたのでしょうか?
篠田教頭:「生徒が遊んでしまうので授業中だけの利用にしたほうがいいのではないか」という意見はありました。ただ、ここは私としては重要なポイントで、授業だけでは使う機会が劇的に増えるわけではないと考えたんですね。教員全員がすぐにパラダイムシフトできるわけではないので。使う機会が多くないと買った意味がないと感じさせてしまうので、生徒が自由に使える時間は大切だと考えています。端末と同時に「Classi」を導入することで、自学自習を可能にするプラットフォームを用意したのも、制限するよりは生徒の満足度を重視するという考え方です。
インタビュアー:生徒が自ら使う時間が生まれる、ということが重要なポイントだったということですね。
篠田教頭:そうですね。授業では教員から「どこどこのサイトにアクセスしてください」といった指示が出るので、どちらかと言うと生徒はパッシブ(受動的)ですよね。一方、休み時間や校外での課題だと、アクティブ(能動的)というか、生徒が主体的に取り組むことになるので、そういう活用をさせた方がいいと考えました。実際に、定期考査の前などに図書館に Chromebook を持って行って、授業動画とかを見ている1年生もいますしね。そういった行動は、授業だけの利用に制限するとできないので。
インタビュアー:利用に関するルールというのはどの程度決められていたのですか?
篠田教頭:県が作成した、学習用校内ネットワークに 接続する時の規定の雛形があったんです。それを元に各校がカスタマイズして使っています。「生徒が授業中にネットサーフィンしたら困るから」という理由で制限を厳しくする考え方もあるのですが、制限しすぎると主体的に使わないんですよね。ある程度の自由度があるから自ら利活用するのであって、そのあたりののせめぎ合いはありましたね。本校では、なるべく厳しくしすぎないよう、なおかつ秩序が保たれるように、「場合によっては生徒指導の対象になる」とか、「授業中は担当の先生の指示のもとに使うこと」といった文言を入れています。
導入業者の選定について
インタビュアー:導入業者としてミカサ商事を選んでいただいた理由はなんでしょうか?
篠田教頭:①価格設定、②保証内容、③購入サイトの運営、④埼玉県での販売実績 ですね。保証の内容については充実した印象を受けました。
保護者の負担への懸念と対応について
保護者が納得した上での購入のために
インタビュアー:校内でも「保護者の負担」が大いに懸念されていたとお聞きしましたが、どのように対応されたのでしょうか?
篠田教頭:保護者への案内には特に気を配りました。導入が決まったのは11月26日でしたが、その後の12月の学校説明会から、保護者への説明を始めました。その際に必ず説明していたのが、導入目的や購入方法を中心とした内容ですね。入学者が決まってからの保護者向け説明会では、「1人1台、これまでの電子辞書に代わって Chromebook を購入していただきます」という表現をしていました。「ただ、ご家庭の事情等でご相談がお有りの方は個別に丁寧に対応しますので何なりとお申し付けください」という言葉を添えて案内を行っていました。
インタビュアー:実際の保護者の反応はいかがでしたか?
篠田教頭:実際には、心配の声として電話があったのは1件で、「子どもがゲーム機のように使いすぎてしまうと言ったことは大丈夫なのか」といった内容でした。そのあたりは、県で示している方針を元に、学校で決めたルールに基づいて指導をきちんとするとお答えし、ご理解いただきました。
Webサイトを通じて保護者が直接購入する仕組み
インタビュアー:購入方法についてはどうされたのでしょうか?
篠田教頭:前述の、視察に行った他校で「販売元に専用の Webサイトを立ち上げてもらい、Webサイトを通じて、保護者から直接の購入申し込みや支払いをしてもらった」と聞いたんです。これはいいなと思い、本校もその形にしました。
インタビュアー:仮にWebサイトでの販売を行わなかったとしたら、どのような形で販売を行うことになったのでしょうか?
篠田教頭:この仕組みがなかったら、初年度の学年費をその分多くお支払いいただく形だったんでしょうね。その場合、ご家庭からすると「学校にたくさん支払っている」という印象になると思います。Webサイトを通じて購入していただくことで、自分で買った自分のもの、という感触を抱きやすいですし、非常に良い仕組みだと思います。
課題としては、事前に案内文書を配布して、購入の期日を設定していますが、やはりうっかり期日を過ぎてしまうというケースがありますね。抜け漏れがないよう、アナウンスの徹底は必要ですね。
経済的に購入が難しい家庭への対応・・・垣間見えた保護者のICTへの意識
インタビュアー:経済的に購入が難しい家庭への対応はどうされたのでしょうか?
篠田教頭:昨年度、本校が独自に購入した15台の Chromebook を貸出用として準備していました。ただ、実際には購入できないという申し出は1件のみだったんです。もっと多くの申し出があると思っていましたので、家庭が利用できそうな奨学制度を調べて案内しました。例えば、国が非課税世帯に対してコロナウイルス対策用の予算を6万円ほど支給していたことを情報提供したり、学校としては民間の財団の事業に応募して予算調達を試みたりしていました。
しかし、ふたを開けてみると、経済的に厳しい状況の生徒も複数在籍しているのですが、むしろ進んで購入するとおっしゃったんです。見方を変えると、今の保護者にとっては、ご家庭の事情はもちろんあると思うのですが、その中でも ICTツールへの支出を必要ととらえていらっしゃるのではないか、という印象を受けました。お話を聞いていると、購入できないとおっしゃったご家庭にもノートパソコンがあって、Wi-Fi が通っているとのことでした。入学時には購入が難しくても、家庭のICT環境としては悪くないということが垣間見えました。
校務や授業での活用
気になる Chromebook の活用状況は?
インタビュアー:篠田教頭の感触では、 Chromebook の校内での活用状況はいかがでしょうか?
篠田教頭:授業でよく使われている先生方の授業は見ていて楽しいですね。例えば50分の授業があったら Chromebook を開く時間が10分あるとか、そのぐらいの授業設計でもいいと思っているんですよ。ただずっと閉じたままはもったいないので、検索だけでもいいし、少し双方向のやりとりをするくらいでも使ってもらえるといいなと思います。1つの授業で10分使ったら、1日は6時間なので合計60分、生徒は使うわけじゃないですか。受益者負担で購入して頂いているので、それなりの利活用は保証してあげたいと思います。
今はまだ1人1台持っているのは1学年だけですが、来年は2学年、再来年は3学年揃うので、その時は楽しみですね。
- ①( 3 )ほぼ毎時間利用
- 14.3%
- ②( 3 )週1程度利用
- 14.3%
- ③( 14 )必要に応じて利用
- 66.7%
- ④( 0 )1度だけ使ったことがある
- 0%
- ⑤( 1 )使ったことがない
- 4.8%
Google Workspace と Chromebook の授業での活用方法
篠田教頭:総合的な探究の授業などは、生徒の課題学習ですから使いやすいですよね。数学とかも無料のグラフソフトを合わせて使っている先生もいますし、英語では「Kahoot!(カフート)」、他の教科でも「Slido(スライドゥー)」といったツールを使って、双方向に問題を出し合ったり、多肢選択問題を出したりしていますね。教員全員が同等に活用できるわけではないので、少しずつ広がっていけばと思います。
超ベテランの国語の先生は、昨年から使い始められましたが、 Google Classroom で問題を出してフォームも使っているとおっしゃっていたので、こちらも頭が下がるくらい御自身をブラッシュアップされている方もいらっしゃいます。
インタビュアー:三村先生には、授業見学で「Kahoot!」を使った双方向の英語の授業を拝見させていただきました。「Kahoot!」以外に使われているツールはおありでしょうか?
三村先生:Google Jamboard™(※6) や Google フォームですとか。フォームは、英単語テストをフォームで作って、かなり時短になっています。テストのプリントとか答えを印刷する手間を省けたり、かなり楽に、時間削減になっているかなと思います。
インタビュアー:君島先生はいかがですか?
君島先生:三村先生と同じで、よく使うのはフォームですかね。コロナの分散登校で、生徒が交互に来るということになったので、教室で一律に紙のテストをすることが難しくなったんですね。学校にいる生徒も家にいる生徒も同時に受けられるようにするために、2学期からフォームでの小テストをやるようになりました。そういう点でも、Chromebook を持っていることで、1学年に関しては他学年よりはスムーズに家にいながら授業を受けるということができたなと思います。
Chromebook を持つ学年と持たない学年・・・両方担当する先生から見る「1人1台のメリット」
インタビュアー:オンライン授業やフォームを使ったテストは、他の学年でも行われているのでしょうか? それとも、1人1台の Chromebook がある1学年だからこそできることなのでしょうか?
三村先生:自分は1学年と3学年を担当しているのですが、Chromebook を持っていない3学年も、1学年と同じように Google Meet で授業の配信はしています。ただ、やはり Chromebook があるほうが大画面で見れますし、フォームを利用してオンラインでも単語テストを一緒に解いたりすることもできます。また、画面共有では見づらかったものが、生徒にファイルごと共有をかけて、生徒は自分の Chromebook で開いて見るということもできますね。そういった点で Chromebook がある1学年はかなりやりやすかったです。3学年の場合は、生徒はやはりスマートフォンで見ていることも多くて、「画面が小さくてスライドが見えない」という声は挙がってきますね。やはり操作性とか機能性は断然違うのかなと思いました。
インタビュアー:どちらの学年も担当されている三村先生から見て、1人1台の Chromebook のメリットを感じやすいのはどのような場面でしょうか?
三村先生:自習の時間でもライブ(生の)授業のようにできるのがかなり強みだと思います。例えば、①PowerPoint に音声を吹き込んだものを Classroom で配信して、それを自習の時間に見てもらう。②その後、関連する内容のテストにフォームで答えて提出してもらう、とすることで、自習でも生徒が取り組んだかの確認がとれます。というのも、他の学年だと Chromebook を持っていないので、自習の時間にはプリントを用意して、授業進度に遅れをとるというのが今までの感触でした。Chromebook を使うと、その日進めたい授業をそのまま、動画をとるなり音声を吹き込むなりすれば、授業が1つ分進むので、個人的にはかなりいいなと思います。プリントを印刷する手間も、それをチェックする手間もないですし、点数を見ればどのくらいきちんと動画を見たのかが分かります。さらには YouTube™ にスライドもアップロードして、再生回数をみればどのくらいの生徒が見たのかも確認できます。
インタビュアー:先生ご自身の工数を減らせるというのと、授業進度にも関わってくるので、授業の内容もより充実するという点にメリットを感じられているのですね。Chromebook を持っている学年とそうでない学年が混在している今の状況ならではのご感想ですね。
授業で使う先生のリテラシー向上
インタビュアー:授業での活用の方法について、先生方はどのように模索されているのですか?
三村先生:校内の教育の情報化推進委員会が行う研修会などに参加したりしています。他校との合同研修会に参加させてもらったこともあり、同じく Google を採用している学校の先生と、どんなアプリを使っているか情報交換をしたりしました。あとは自分で調べることも多かったですね。
インタビュアー:校内の研修の内容は、Chromebook や Google Workspace のアプリの操作方法が主でしょうか?
三村先生:そうですね。Classroom の使い方やファイルのアップロードの仕方とか、フォームについての説明もありましたし、分散登校時の Google Meet を使っての授業のやり方もありました。その都度必要があれば、研修会を開いてくださっているので、それに教員は参加するという形です。
木村先生:研修は教育の情報化推進委員会が開催していますが、外部講師に依頼した時もありましたね。
1人1台の端末は何のために? ICT化に関する今後の展望
課題はペーパーレス化、業務の効率化・・・グループウェア導入も見据えて
インタビュアー:今後の展望として挙げていただいた「ICTを活用したペーパーレス化・電子化の推進」「校内グループウェアの稼働」「教員の業務の効率化」について、詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?
篠田教頭:例えば、朝会や職員会議などで、声を発さなくとも伝わる連絡等が多くあるんですね。例えばグループウェアに載せておけば各自で見るだけで済むようなことなのに、そのやりとりにかかる時間は、実は大きなコストですよね。紙を使うにしても、分厚い綴じ込みを全員に配布したりすることがいかに無駄なことなのか、ひしひしと感じます。
私自身も、若い頃は遅くまで生徒を指導するとか、朝から晩まで学校で授業準備するとか、色々と身に覚えがあるのですが…。学校現場は今よりももっと、効率化や時間の意識を身に着ける必要があると感じます。どれくらいのコストをかけるとどれくらいのリターンがあるかということをあまり意識していない。それが教育の良さでもあるのですが、熱意とコストパフォーマンスの意識というのは共存するべきだと考えています。
インタビュアー:コストパフォーマンスの意識について、様々な面から課題を感じるということですね。特にペーパーレス化を重視しておられる理由について、お考えをお聞きしてもよろしいでしょうか?
篠田教頭:私は職員室の責任管理者なので、掃除をするのですが、とにかく紙ごみが多いんです。紙をなくせば、先生方がシュレッダーをかける時間も、そのごみを処分する時間もなくなるわけじゃないですか。ペーパーレスにするということは時間を生むことに直結していますよね。紙で置いておく必要があるものは保管して、それ以外は電子で置き換えると。ペーパーレス化はそのまま業務の効率化でもあります。今後、教職員用のグループウェアの導入をして、Google Workspace とうまく連携して使っていければと思っています。
インタビュアー:1人1台の端末は何のために?「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて
篠田教頭:続けて、今後の展望には、やはり「『主体的・対話的で深い学び』を実現する授業実践」を挙げたいと思います。もちろん、生徒が画面に向かって黙々とスライドを作ったりすることもあっていいと思うんです。しかし、授業では画面に入り込むんじゃなくて、操作しながら、教員と生徒や、生徒同士がやりとりする、そういった双方向の活動をするための1人1台だと思うんですよね。
GIGAスクール構想が発表された時に、「個別最適化した学び」と「主体的・対話的で深い学び」が相反するのではという議論が起きましたが、個別最適化はある意味授業の外でやればいいことだと考えています。家でもできる課題や学習などですね。授業はあくまでも、文部科学省が提唱するような、「主体的・対話的な学び」を推進するための1人1台という認識です。授業では「主体的・対話的な学び」、外では「個別最適化した学び」とすればいいと思います。本来両方できる Chromebook のはずが、「個別最適、個別最適」と授業の文脈でアナウンスすればするほど、「主体的・対話的な学び」が薄れていってしまう、そこが重要かなと思います。
インタビュアー:「個別最適化した学び」と「主体的・対話的な学び」は、それぞれ別の機会で実現できるものであり、授業では後者に注力していければということですね。
篠田教頭:はい。ですので、本校でも、授業では Chromebook を使った双方向のやりとりや、アクティブラーニングがもっともっと増えていけばと思っています。今もそれに近いことができている授業もあるので。そのための1人1台だと思います。
導入の先にあるものを見据えながら、保護者の個人購入という形で1人1台を実現された小川高等学校様。
校内では、Chromebook を使った調べものをされる生徒様や、相互的な授業を実践される先生方のお姿があり、ICTが日常の一部として存在しているご様子を拝見できました。このたびは貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。
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