生徒用端末の活用の奮闘、これまでと現在
生徒の意見がきっかけに。生徒用端末導入の経緯
インタビュアー:初めての端末導入までの経緯をお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:当時 のある学年の学年 部長が「学校が良くなるためには」というテーマで生徒から意見を集めたところ、その中に「 SNS を活用した学習効率向上」という意見があったんです。その意見をもとに、 ICT 端末 を導入できないかという話になりました。また、本校のカリフォルニア校が先行して iPad を導入しており、すでに ICT を活用した学習を行っていたので、それを参考に本校でも ICT 端末 を導入することになりました。 2014 年当時は Chromebook の知名度はほとんどなく、 ICT 端末の導入と言えば iPad という時代でしたし、教育系のアプリが充実していることや、カリフォルニア校でも iPad を導入していることから本校でも iPad を導入しました。
2014年当時の端末導入に対する教職員、保護者の 反応
インタビュアー: iPad の導入に対して、教職員様や保護者様の反応はどのようなものでしたか?
大倉先生:端末導入当時はコロナがなかったので「オンライン」や「 ICT 端末 を使う」という考えがありませんでした 。保護者 や教員は「なぜ端末を使わないといけないのか」 「持たせる必要はあるのか」という反応でした。「なぜ持たせないといけないのか」と考える人が多く、端末の活用まで考えている人はいなかったので、 iPad を導入してから数年はただ端末を持たせているだけという印象を受けましたね。今はそういったことはありませんが、当時は半数以上が反対意見でした 。
インタビュアー:当初は教職員の皆様が納得されて導入したわけではなかったのですね。
大倉先生:電子機器を持たせること自体に高いハードルがあったので、その中での iPad 導入は非常に難しかったですね。導入後も、生徒だけが端末を使い、教員は使っていないという状況が続きました。生徒達は文化祭や体育祭運営でコミュニケーションツールの1つとして Google Classroom (※1) などを使っていました。携帯電話を持たせていなかったので、端末が唯一の連絡手段になっていました。 一方で、教員は Classroom を活用して連絡や課題配布を行うといったことはほとんどありませんでした。ただ、その中でも何人かの先生が、課題の解答をペーパーレスで配布するようになるといった動きはありましたね。
※1 Google Classroom とは、課題などのやりとりをオンラインで行うことができる学習管理プラットフォーム
Chromebook に切り替えた現在の端末活用について
インタビュアー: Chromebook を導入した現在は、端末をどのように活用されているのでしょうか?
大倉先生:端末を活用 しハイブリッド授業をすぐに行えるように体制を整えています。例えば、生徒のご家族が発熱した場合、その生徒は登校を控えることになる のですが、希望すれば授業に遅れないようにオンラインでも授業を受けられるようにしています。オンライン授業がすぐにできるようになり、非常に便利だと感じています。 Chromebook に限らず、1人1台の端末があるからこそできることだと思います。
インタビュアー:オンライン授業の他にはどのように活用されているのでしょうか?
大倉先生:例えば、朝のホームルームの連絡は Classroom を活用していて、クラスに行くと「 Classroom を見ておいて」と伝えるだけで朝の連絡は終わります。他には、休校の連絡にも Classroom を活用しています。 午前は休校で、午後から登校の場合も生徒に一斉に連絡することができます。コロナ禍以前は、教員は Classroom の機能を全て活用しようとしていなかったのですが、今は活用度合いが上がってきていると感じます。 Classroom 以外に も Google Colaboratory というアプリを使ってプログラミング授業を行ったり、 Google スライド ™ (※2) を活用し、発表や文化祭の準備などにも Chromebook を活用しています 。
※2 Google スライドとは、Google Workspace に含まれる基本無料のプレゼンテーション作成ツール
教員の自主性を尊重しながら進める校務効率化
インタビュアー:事前アンケートで「今後、デジタル採点を導入し Classroom を通して返却したい」とお話を伺っております。詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
大倉先生:現在、デジタル採点を試験的に導入しているのですが 、本格的に導入することが決まりました。
インタビュアー:強制的にデジタル採点を活用するようなルールを設けることは考えて いらっしゃるのでしょうか?
大倉先生:学校としては先生方にお任せするという方針なので、必ずデジタル採点を使わな ければいけないというルールは作りません。それぞれの先生がやりたいようにしてもらっていますが、使わない先生はずっと使わないままなんです。デジタル採点を試してもらえるようになんとか説得して使ってもらったところ、やはりデジタル採点を使用したほうが、手作業で採点するより、採点時間が2分の1から3分の1に減ったので、今までデジタル採点を使っていなかった先生にも「デジタル採点は使える」と感じていただけたようです。デジタル採点にすることで、採点時間だけでなくミスも明らかに減りました 。中にはデジタル採点を活用して小テストの採点を行っている先生もいます。その先生は、デジタル採点を活用したことで採点にかける時間が減ったので、テストを行う回数を増やしているんです。今までは 1 週間に1 回だったのが、2 、3 回テストを行えるようになったそうです。 ICT を活用して削減できた時間を、有効活用してくれていますね。
インタビュアー:デジタル採点を活用するかどうかは先生方の判断にお任せしているとのことですが、授業での端末活用についても先生方の判断に任せられているのでしょうか?
大倉先生:先生方に任せているので、よく活用されている先生とあまり活用されていない先生がいらっしゃるのですが、それは仕方がないと思っています。そのような差は研修を行って縮めるしかないですね。
インタビュアー:これまで ICT に関する研修などはされていたのでしょうか?
大倉先生:自由参加の研修は行っていたのですが、やはり参加率は低かったですね。ICT スキルのレベルに差があり、研修が必要ないほどスキルの高い人もいるので強制参加にはしなかったのですが、自由参加だと本当に研修が必要な人は参加しないんです。これまでは、Classroom の使い方や Google フォーム(※3) でのアンケート作成方法 など具体的なものをあげて研修を行いました。
※3 Google フォームとは、 Google Workspace に含まれる基本無料のアンケート作成ツール
iPad 利用時に感じていた課題
アプリのインストールを生徒にさせることで生じる問題
インタビュアー:iPad を活用する上で、感じられていた課題についてお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:アプリのインストールを生徒にしてもらう必要があることに課題を感じていまし た。アプリをインストールさせたい時にだけ、 Apple Store を開放してインストールしてもらっていたのですが、必要なアプリをインストールし忘れる生徒がいたんです。その生徒にアプリをインストールさせるためには、もう一度、 Apple Store を開放させるという手間がありました。また、Apple Store を開放すると、勉強に関係のないアプリをインストールする生徒もいました 。履歴を見ればどんなアプリをインストールしたかわかるので、生徒が勉強に関係のないアプリをインストールするたびにそのアプリを消させていました。
端末故障時の対応が教職員の負担に
大倉先生:破損が多いことも課題として感じていました。生徒はとにかく iPad を落とすんです。ケースをつけていましたがあまり意味がなく、落として画面を破損させることが圧倒的に多かったですね。
インタビュアー:故障が多いと、修理対応など教職員様の業務負担が大きくなってしまうと思うのですが、そのようなことはなかったのでしょうか?
大倉先生:故障の度 に修理 手続きや保険などの申請をしていたので、業務負担が増え、かなり大変でした。あとは修理期間中に代替機がないことが一番苦しかったですね。
インタビュアー:修理期間中はどのように対応されていたのでしょうか?
大倉先生:端末なしで授業を行っていました。もし端末を貸すことになったとしても、 iPad だと自分が普段使っている端末と同じ環境を作れないですよね。Chromebook だと自分のアカウントでログインすれば自分の環境で 作業できますが、iPad ではできないので、修理が終わるまで待つしかないという状態でした。
なぜ iPad から Chromebook に?端末を切り替えた理由
理由➀:価格負担を減らすため
インタビュアー:iPad から Chromebook に切り替えられた理由について、事前アンケートで4つご回答いただいております。それぞれ詳しくお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:1つ目は、iPad の価格が非常に高かったことが理由です。保証なども含めて 8 、9 万円程だったと記憶しています。 Chromebook だと保証を含めても 5 、6 万円ぐらいですよね。端末をどのように活用するかは、それぞれの学年に任せていたので、iPad の頃は、Classroom やスライド、スタディサプリしか使っていない学年や、そもそもほとんど端末自体を使っていない学年もありました。また、難しいことに iPad 利用当時は保護者の意見も二分化していたんです。「もっと使わせて欲しい」という保護者と、「 iPad なんか持たせないで欲しい」という保護者に分かれました。端末を持たせたくないという保護者からの反発も一定数あったと思うので、端末を購入したからと言って積極的に活用を進められる状況でもなかったのだと思います。 iPad に関しては、良くも悪くもスマートフォンに近い感覚が保護者にもあって、学習に関係のない使い方をイメージさせやすい側面もあったと思います。
理由➁:画面破損が多発
大倉先生:2つ目の理由は、画面破損が多発したことです。画面割れや液晶の故障、あとは 充電ができなくなるなどの破損もあり、それぞれ修理費用が高かったんです。
インタビュアー:修理費用はどのくらいかかっていたのでしょうか?
大倉先生:修理ではなく交換がほとんどでした。全員一律で保証には加入していたのですが、保証の上限金額をすぐに超えてしまっていたので、保証は適用されず交換対応でした。あとは、iPad の紛失も多かったです。 Chromebook はほとんどないのですが、iPad はスマホと感覚が近いからか、色々な所に適当に置いて紛失させる生徒が多かった ですね。
理由➂:Google Workspace との親和性
大倉先生:3つ目は Google Workspace を導入していたことです。すでに Google Workspace を導入し活用していたので、Google Workspace との親和性も考えると、端末を Chromebook に切り替えて Google でそろえようということになりました。
理由➃:キーボード入力をさせるため
大倉先生:4つ目は、生徒にキーボード入力をさせたいと考えていたことが理由です。 iPad だと外付けのキーボードをつけないといけないので、その分金額も上がりますし、外付けキーボードは打ちにくいということもあり他の OS も検討していました。他 OS への切り替えも検討していたタイミングで情報が入試になるかもしれないという話があり、プログラミングをさせるためにもキーボードが必要だという話になりました。ちょうど Chromebook が認知されるようになってきたタイミングでしたし、Chromebook であればアプリも強制インストールさせることができるなど総合的に考えて Chromebook が良いということになり、 OS を切り替えることになりました。
OS 切り替えに対する教職員や保護者の反応
インタビュアー:OS 切り替えに対する教職員様の反応はいかがでしたか?
大倉先生:反対意見はなかったです。Chromebook では、学校が強制インストールさせたアプリしか使えないようにできるので、iPad よりも自由度が下がるイメージがあるんです。「遊べる iPad から遊びにくくなる Chromebook になるのであればいいんじゃないか」と受け入れてもらえたので、反対意見はなかったですね。
インタビュアー:Chromebook への切り替えに対して保護者様の反応はいかがでしたか?
大倉先生:端末は学校で管理されていて自由に使えるわけではないので、iPad とChromebook のどちらにしても変わらないと感じている方が大半でした。 Chromebook への切り替え時には、ニュースでも端末導入に関して取り上げられていたり、導入している学校も増えていたこともあり、端末導入自体に抵抗を持たれている方はかなり減りました。
インタビュアー:コロナ禍など時代の流れもあり、保護者様の反応はいい方向に変わったということですね。
大倉先生:保護者の方も在宅で仕事をしないといけないのに、子どもがパソコンを使うので仕事ができなかったところ、学校で生徒に1人1 台持たせてくれたおかげで助かったという方もいらっしゃいました。そのような時代の流れのおかげで、端末を導入することに反対する教員も保護者も今はいないと思います。
使ってみて感じる iPad と Chromebook の違い
代替機を貸し出すだけ。端末故障時の負担を軽減した Chromebook
インタビュアー:端末を活用されるにあたって感じられた iPad と Chromebook の違いについてお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:端末故障時、 Chromebook は代替機を貸し出すだけで済むというのは iPad との違いとして感じています。 Chromebook の場合、ログインすれば自分の端末と同じ環境が出来上がるので、貸出用の端末を渡すだけで、生徒は通常通り使えるんです。 iPad の場合、データをローカルに保存していることが多かったので、 Chromebook のように端末を貸し出すだけでは上手くいかなかったと思います。
インタビュアー:iPad の場合は修理に出す際も、一度、生徒様にバックアップを取ってもらってから修理に出す必要がありますよね。
大倉先生:そうですね。リセットしてもいいか念のため確認していたので、その手間はありました。 Chromebook だとそういったやり取りが必要ないというのも助かりますね。基本的にはデータは Google ドライブ ™ (※4)に保存されているので、バックアップをとる必要はないんです。ローカルに保存していつでも開けるような状態にしたいのであれば、ドライブからダウンロードすれば済みます。今、本校には100 台以上の予備機があるんです。端末が故障してもその予備機を貸し出すだけで済むので、端末故障時の負担はかなり減りましたね。
ブラウジングや Google Workspace の操作性の違い
大倉先生:iPad で Google Chrome ™ を 見るのと、Chromebook で見るのは操作性が違いますよね。 iPad では少し扱いにくいと感じます。私は iPad も Chromebook も両方使用していますが、 Google ドキュメント ™(※5) や Google スプレッドシート ™ (※6) 、スライドなどを iPad で作成するのは少し大変ですね。
インタビュアー:iPad だとメニューが一部しか映らないなど、 Google Workspace との親和性の違いを感じられているということでしょうか?
大倉先生:そうですね。 iPad だと Google Workspace の操作が大変なので、そういう意味でも Chromebook の方がいいと感じています。
※4 Google ドライブとは、 Google Workspace に含まれるツールの1つ。ファイルの保存、検索、共有などが 可能 ※5 Google ドキュメントとは、 Google Workspace に含まれる基本無料の文書作成 ツール ※6 Google スプレッドシートとは、 Google Workspaceに含まれる基本無料の表計算ツール
端末切り替え後の運用の実態
現在も教職員は iPad を活用。教職員と生徒で異なる端末を使用する理由
インタビュアー:生徒様の端末を Chromebook に切り替えた今も教職員様は iPad を使用されていると伺いました。教職員様と生徒様で別の端末を使われる理由はどのようなものなのでしょうか
大倉先生:iPad を導入した当時は、日本にはまだ Chromebook が少なかったので教員も生徒も iPad を採用したんです。教員は約10年ほど iPad を使用していて、現在も iPadでスライドをプロジェクターに映して授業を行ったりしています。コロナ禍になり、オンラインで授業や会議をしようとした際にウェブカメラを用意できなかったので、先生達の iPad でオンライン授業や会議をしてもらうことになったんです。先生達が持っている iPad のカメラは非常に古かったので、この機会に新しい iPad を導入してオンラインに対応できるようにしました。各教室にスタンドも購入し、そこに iPad を立てて、カメラで映してオンライン授業を行っています。各教室のプロジェクターに Apple TV をつけてミラーリングできるようにしています。 Chromebook はどこかに立てかけることもできないですし、先生達は今まで iPad で慣れているので、急に Chromebook に変えることは難しく、今でも iPad を使用しているんです。
管理を電算部に一元化し、管理体系の乱れを解消
インタビュアー:生徒用端末を Chromebook に切り替えたタイミングで管理体制を変えられたと事前に伺っております。詳しくお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:これまでは、各学年の担当者が端末を管理していました。端末の管理状況については、各学年の担当者に管理が完全に委ねられていました。端末の活用レベルが学年によって違っていて、スライドやスプレッドシートしか使っていない学年もありました。
インタビュアー:授業でどのように端末を使用するのかも担当の先生に任せていたため、各学年で差が出ていたのですね。
大倉先生:そうですね。そのような状況だったのを、学習者用端末を Chromebook に切り替えたタイミングで、電算部で端末の管理を行うことにしたんです。どのアプリをインストールするかは各学年ごとで決めてもらい、アプリのインストールなどは電算部で行うようになりました。それまでは各学年が何をしているのか把握できなかったのですが、全学年の端末を管理する部署ができたことで、各学年の端末状況を把握できるようになりました。
端末切り替え時に感じていた懸念と現状
インタビュアー:iPad から Chromebookへの切り替えにあたって、感じられていた不安や懸念点についてお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:先ほどもお話しした通り、学習者用端末を Chromebook に切り替えても教員はそのまま iPad を使用しているので、教員と生徒で Chromebook に対する理解度の差が出てしまうことを懸念していました。実際に、教員と生徒でその差が出てしまっています。iPad はほとんどの先生が iPhone も使っているのであまり抵抗がなく、研修がなくても使いやすいと感じる先生が多いのですが、 Chromebook は使っている人じゃないと使いづらいのだと思います。生徒に「これはどうしたらいいですか」と聞かれた時に、iPad では対応できても Chromebook では対応できる人がほとんどいないんです。ですから、私のような Chromebook を分かっている人に聞きにくるんです。
インタビュアー: Chromebook について分かっている方は限られているため、その方に聞くしかないということですね。
大倉先生:そうなんです。今でも先生達は Chromebook の知識がないので生徒にレク チャーできない、トラブルに対処できないという状況です。各学年の修理担当の先生ですら、修理に出すという作業をしているだけで、端末のリセット方法を分かっていないという現状もあります。
インタビュアー:実際の修理に出すにあたっての端末リセットなどの作業は電算部でされているということでしょうか?
大倉先生:そうですね。修理に出さなくてもリセットで対処できそうなものは電算部で対応 しています。本当は Wi-Fi のパスワードさえ教えれば、教員全員に端末のリセット方法を教えられるのですが、そうすると生徒達にパスワードが漏れてしまうことがあるので 、教えることができないんです。2022 年から校内ルールを厳しくし、先生達にも校内 Wi-Fi のパスワードは教えないということにしたんです。校内の Wi-Fi にはプロファイルを使用してもらい、パスワードを手入力して Wi-Fi に接続してもらうのはやめました。個人の端末を使って授業したい場合は、ゲスト Wi-Fi のパスワードを教えているのでそれを使ってもらうようにしています。
インタビュアー:先生方のパスワード管理についても課題となっているということでしょうか?
大倉先生:非常に大きな課題だと思っています。本校で一番困っているのは、先生方の Chromebook に関する知識不足 やリテラシーに ついてですね。そういったことにはかなり苦戦しています。
ICT に 関する今後の課題と展望
「校内ネットワークの強化」「利用ツールの統一 」等、現在感じられている課題
インタビュアー:ICT に 関する現在の課題をお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:校内のネットワークを強化したいと考えています。各教室に Wi-Fi のアクセスポイントはあるのですが、特別教室や体育館などネットワークがなく Chromebook が使えない場所もあるんです。体育館であれば体育祭などでパフォーマンスをする時に、ネットワークがないためファイルが開けないということもあるので、そのような場所でもネットワークが使えるようにしてあげたいと思っています。新しい建物もできたので、渡り廊下なども 含めて Wi-Fi 環境がない場所を強化していきたいと思っています。また、端末を活用するようになってきたので、一斉にアンケートなどをとるとネットワークがダウンしてしまうんです。そのような環境を変えるために、現在、校内ネットワークの整備を進めています。
インタビュアー:校内どこでも使える環境を整えるということですね。
大倉先生:そうですね。校内どこでも使え、全員が同時に使っても落ちない環境にしたいで すね。200 人が同時に使った瞬間に急にネットワークが止まったり、別の学年が使おうとしていたのが使えなくなり、急遽集会に変えるということも過去にありました。それだけ教員も生徒も皆が端末を使うようになってきたということなのですが、一斉にネットワークを使っても落ちることがないようにネットワークを強化したいと考えています。
差を縮めるための教職員の ICT活用能力の底上げ
インタビュアー:事前アンケートで、 ICT に関する現在の課題について「点在している情報を集約する必要がある」と伺っております。詳しくお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:現在、先生達が校内で使用しているソフトが混在しているんです。例えば、オン ライン授業で使用するビデオ会議ツールなども、Zoom と Google Meet™ (※7) が混在しています。端末導入当初は、先生方は皆さん Zoom を利用していたのですが、 Google Workspace の有償版を購入し Google Meet の有償機能を使えるようになると、Zoom を使う先生と Google Meet を使う先生に分かれてしまったんです。 Google Meet のほうが設定も簡単ですし、Classroom からGoogle Meet に参加することも出来るので、ビデオ会議ツールは Google Meet で統一したいのですが、使いなれている Zoom から離れられない先生が多いんです。学校としてある程度揃えたいと思っているのですが、あまり上手くいっていませんね。教員同士の連絡ツールも様々なソフトが混在しているんです。私のように Google Chat™ (※8) を使っている人もいれば、Slack や学校のグループウェアを使っている人もいます。情報が点在しているので、その情報を一ヶ所にまとめるというのが現在の課題です。
インタビュアー:事前アンケートでは「教員の ICT 活用能力の向上」も課題として感じていると伺っております。詳しくお聞かせいただけますでしょうか?
大倉先生:非常に衝撃的だったのは、これまでiPad を使用していたにもかかわらず、iPad の設定の開き方がわからない先生がいらっしゃったことです。 ICT を活用できる人とできない人で大きく差が開いているんです 。
インタビュアー:そこまで差が開いていると、教職員様が全員参加する研修を行うというのは難しいのではないでしょうか?
大倉先生:一斉に行うのはかなり難しいですが 、その差を縮めないと日常の校務に影響が出てしまうんです。 「ドライブのこの場所にこのファイルがあります。共有済みのファイルです。」と言っても何を言ってるか分かってもらえないんです。その場合、一から説明しないといけないのでお互いに困るんです。全員に高度な技術を求めているわけではないですが、ある一定のレベルまではなってくれないと仕事にならないですね 。今後は、Google Workspace の活用なども含めた教員の ICT 活用能力の向上を行っていきたいと考えています。
※7 Google Meet とは、 Google Workspace に含まれる基本無料のビデオ会議ツール ※8 Google Chat とは、 Google Workspace に含まれるコミュニケーションソフトウェア
「業務負担の軽減」「教員のスキル向上」 すべては生徒の能力育成のために
インタビュアー:今後のさらなる活用や御校の ICT に関する展望についてお聞かせ頂けますでしょうか?
大倉先生:教員の業務負担を減らし、その分生徒と関わる時間を増やしたいと考えています。 現在混在しているツールを統一しながら、生徒達に何ができるかを考えて、新しい取り組みをさせたいと思っています。高校生でも、ある程度プログラミングや Web に関するスキルを身につけた子が育ってもいいと思っているんです。 Web デザイナーなど、今まで将来の選択肢として本校の生徒達になかったようなことが増えればいいんじゃないかと思っています。教員も生徒も皆で活用できるようになり、学校としてスキルが上がればいいですね。
インタビュアー:「新しい取り組み」というのは、どのようなことをお考えなのでしょうか?
大倉先生:先ほど申し上げたような「生徒の選択肢を増やす」こともその1つですが、教員の ICT スキルを向上させたいと考えています。教員のスキルが上がらなければ、生徒のスキルも上がらないですよね。本校では Google 管理 コンソールの設定で、Youtube ™ などはブラックリスト形式で閲覧を制限しているのですが、外部のプロキシサーバーを通せば自由に YouTube を見られるということを生徒は知っていて、勝手に YouTube を見ているんです。 YouTube は1つの例ですが、それ以外のことでも教員よりも生徒のほうが ICT を知っていますし、より ICT スキル を向上させることができるのは生徒だと思っています。しかし、ある程度のスキルまでは教員が上げるべきだと思っているので、情報の授業以外でも ICT の 使い方などを教育する必要があると思っています。生徒のスキルをさらに向上させるために、まずは教員の ICT スキルを向上させていきたいですね。
(2022年7月13日取材)
生徒様の能力育成のためタブレット端末から Chromebook への切り替えを行われた西大和学園中学校・高等学校様。端末導入や導入後のご活用に関するお話しから、教職員様の生徒様への思いが伝わります。このたびは貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。
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